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Uchina Columnウチナーコラム

海外取材で知った、沖縄のスピリット

2018年2月2日

前原信一  SHINICHI MAEHARA



世界ウチナーンチュ紀行を作られたきっかけは?

戦前はウチナーンチュ特有の社会みたいのが続いていましたが、1972年に本土復帰を果たすと、沖縄は「本土の一つの県」となりました。
時代的背景から、私たちウチナーンチュは本土に対応する、近づいていくための努力をしなければいけない時期がありました。
しかし、10年くらい経ってみると、やっぱり沖縄のメンタリティとか、ウチナーンチュの考え方、行動っていうのは本土の人たちとは違うと気づき始めてきました。
そこで、もっと「沖縄らしいもの」に我々は目を向けるべきじゃないかという流れがでてくるんですね。そういう時に琉球新報社が1984年から「世界のウチナーンチュ」という連載企画を2年間にわたって毎日掲載しました。
それは世界中にいる沖縄の人たちを訪ねてインタビューする記事でしたが、私はそれを読んで非常にインパクトを受けました。
世界各地に移民や移住で行った人たちは、それぞれの国で「沖縄のスピリット」を大切に持ち続けていて、沖縄の歌、三線、伝統文化をとても大事にしている。
私は衝撃を受けて、これを是非映像化したいと思い、会社を説得して海外取材をスタートし、1987年に番組化しました。

海外で移民の方と接して感じたことは?

沖縄の移民は現在から一世紀前に始まっていますが、 戦前に海を渡った方々は、当時の村落共同体の中で育まれた、沖縄の心「ユイマール」という相互補助の気持ちを持ち続けていました。
優しさとか思いやり、沖縄の慣習とか文化をそのまま海外の移民地に持って行っていたんです。我々は本土復帰後、自分たちのメンタリティが少しずつ変わってきていましたから、当時の沖縄に住むウチナーンチュのメンタリティと、海外のウチナーンチュのメンタリティには差がありました。
そのため、海外の現地で会うウチナーンチュには、どこか「懐かしさ」みたいなものを感じたわけです。昔は、こういう人たちがどこにでも居たんだというのに気付かされました。
ウチナーンチュと接したときの「心地よさ」。昔のウチナーンチュの原型みたいな人たちに会った懐かしさを感じましたね。
世界のウチナーンチュに会ってみると、自分たちはもっと彼らみたいにウチナーンチュが持つ「ちむぐくる」を見つめ直さなければいけないと感じました。番組の中では、そういったところをなるべく多くとらえて、視聴者に見てもたらいたいという気持ちで作っていました。

ハワイで名誉博士号を授与された経緯は?

ハワイにはウチナーンチュが多いので、ハワイ大学は沖縄の移民研究に力をいれていました。移民研究センターもあり、ハワイ大学から映像資料を収めてくれないかと話がありました。ハワイ大学からの要望に応え、沖縄テレビからハワイ大学に映像資料を収めたことから、名誉博士号を頂けたと思っています。
ハワイでは日系人も多いため、日系人向けの放送もありますが、、そこで10年近くにわたって世界ウチナーンチュ紀行は何回も放送されています。
沖縄系の人達だけではなく、ハワイの日系の方たちにも見ていただいてる。そのことも名誉博士号を授与された一つの要因なのではないでしょうか。

世界のウチナーンチュについて

「移民地」と一括りで表現しても、ハワイ、北米、南米、南洋諸島など、移民のヒストリーはそれぞれの国や地域によって全く違います。その中でも、沖縄の気質は、意外と南米の人と合っていると感じました。
南米の人はのんびりしていて、少しおおらかな生き方をする人たちが多いので、ウチナーンチュは割と南米(ブラジルやペルーなど)とは気質が合っているように現地に移り住んだ方々と会ってみて思いました。沖縄の人の特性として、「いちゃりばちょーでー」という気質があります。誰とでも、親しくなれるというメンタリティを意味していますが、そういう気質があるから、現地でうまく馴染むことができ、順応しやすいという面があると思います。

これから世界を目指すウチナーンチュへ一言

私がずっと海外の沖縄の人達を取材してみて考えたのは、「ウチナーンチュにとって大切なことは何か」ということです。
それはやっぱり「気質」だと思います。
沖縄的な物の見方、物の考え方、他人に対する思いやりなどは、先代の人たちが育んできた大切な気質なんです。
ウチナーンチュがその気質を持ち続ければ、沖縄の観光の可能性っていうのは、もっと広がっていくと思います。人と人とのふれ合いに観光の魅力の一つがありますから。
最近の沖縄の気質は、先代の人たちよりも薄らいでいると感じます。
ですから、改めてもう一度ウチナーンチュらしさ、ウチナーンチュのアイディンティティ、それをもう少し我々も考えていく必要があると思いますね。



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